【幸せを紡ぐ物語】

  1. 物語【夜の風に吹かれて】第3話

    私は明かりが灯った小さな家の窓から、こっそりと中を覗いた。もしかしたら、この町の人たちを追い出したならず者たちの隠れ家かもしれない。窓の隙間からは何やら良い匂いが漂っていた。スープの匂いだろうか…と、思わず味を想像しようとしたところで、ギィっと錆びた金具の音を立ててドアが開いた。

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  2. 物語【見知らぬ雨】最終話

    森の中の雪道のところどころ、茶色い地面が顔を出し、女の子の足跡は雪解けの土に包み込まれて消えていました。春がやってきたのです。背の高い木の上から、とけだした雪がバサリと音を立てて落ちました。木々の間から木漏れ日が差し込み、ここが約束の場所であることを告げています。

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  3. 物語【春を待つ日】第1話

    この国は春と冬、二つの季節しかありません。9ヶ月に及ぶ長い長い凍える季節が終わると、いっせいに草花が咲き、虫たちがもぞもぞと土からはい出し、短く美しい春の訪れを告げます。この国の人たちは、短い春の季節を待ち望んで寒い冬の季節を静かに過ごすのです。

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  4. 物語【夜の風に吹かれて】第2話

    星明かりを頼りに、かつては店だったと思わしき建物を見つけて、暗がりの中あれこれ物色したが、あめ玉一個も見当たらない。あてどない私の旅路も、このゴーストタウンで終わりを迎えるのだろうか?飢えて最後を迎えるなどとはなんと空しいことか。

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  5. 物語【見知らぬ雨】第3話

    春。女の子は咲き誇る花とともに歩きました。夏。太陽の力強い日差しを浴びると、歩き続ける勇気がみなぎりました。秋。色づいた木の葉たちは、季節が巡ることを告げてくれました。そして冬。女の子は降りしきる雪の中、静かに歩き続けました。

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  6. 物語【night piece】最終話

    「私の飼い主は一人で暮らしていた時だって、とても幸せそうだったよ。自分を愛して慈しんでいたからね」「その人は…1年前に亡くなったの?」「いや、元気だよ」猫がニヤリと笑いました。「1年前に王子様が現れて、一人暮らしではなくなったのさ。

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  7. 物語【夜の風に吹かれて】第1話

    星が輝く夜空の下、ピューピューと風が吹いていた。この町は人っ子一人見当たらず、どうやらゴーストタウンのようだ。立ち並ぶ家や店に明かりはなく、澄んだ空の星明かりだけがあたりを照らしていた。半分壊れかけた建物の間を、ゴミや枯れた草が風に吹かれて、生き物のように飛んで行った。

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  8. 物語【見知らぬ雨】第2話

    女の子の鞄には小さな花の種が入っています。お母さんが大切に大切に育てていた花の種です。女の子は旅に疲れると足を止め、鞄から種が入った小さな包みを取り出し見つめました。女の子は歩き続けました。街を過ぎ、山を越え、谷をわたり…。

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  9. 物語【night piece】第5話

    「彼女にだって長い人生の中では色々なことがあっただろう。だけど、家を花で飾り、いつでもきちんとおしゃれして、お気に入りのカフェでお茶を飲み、1人で夕食を食べる時もきれいに盛りつけて、豪華じゃないけど自分のために美味しいディナーを用意して。

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  10. 物語【すずらん】最終話

    その男の子、悪い人には見えなかったし、実を言っちゃうとちょっと好みだったんだけどね…。少しくらい一緒にお茶してもよかったかしら?なんでいつも毒発言しちゃうのかしら?あたしって気が強い割に、時々自分の毒で傷ついちゃうの。

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