1. 物語【シャボン玉】第1話

    「いつもあなたを見ています。遠くの空から見ています。」今日もまたあの夢を見ました。1ヶ月に1度、必ず見る夢。どこか遠くの空から私に語りかける声がして、私は声の主を捜すのだけれど、あたりには誰も見当たりません。見上げる上空には青い空が広がり、たくさんのシャボン玉が舞っています。

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  2. 物語【睡蓮】最終話

    「睡蓮の花というのは、昼に咲きはじめ、日の入りには眠るように閉じてしまうそうですね」若者は池の睡蓮をじっと見つめました。「そうです。この池の花ももうしばらくすると閉じてしまいます。

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  3. 物語【睡蓮】第4話

    1年前、夢破れて故郷を離れてから、誰かのために力を尽くすなどと言うことがあっただろうか…。思えば今日まで、ただひたすらに自分のためだけの道のりだったと、若者は歩きながら旅路に思いを巡らせていました。小さな睡蓮の池を出てから、ちょうど丸一日たった午後、歩き続けた若者は西の森へつきました。

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  4. 物語【睡蓮】第3話

    「旅の方、あなたにお願いがあります。私はとても大切な約束で明日の夕方までに西の森へ行かなければなりません。ですが、痛んだ羽が治るまで3日はかかるでしょう。どうか私を西の森まで運んでいただけませんか?」若者は驚きながらも快く妖精の願いを引き受けました。

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  5. 物語【睡蓮】第2話

    気のせいか…と思って、池へ目をやると、池に浮かぶ睡蓮の葉の上に、背中に羽をつけた小さな少女が座っている姿が目に入りました。少女の大きさは、若者の手のひらに乗るくらいでしょうか。旅の疲れが見せる幻か、と思い、若者は目をこすりもう一度池を見ましたが、やはり睡蓮の葉の上に少女がいます。

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  6. 物語【睡蓮】第1話

    あるところに睡蓮の花が浮かぶ、小さな池がありました。その水は青く澄んでいましたが、重なりあうように浮かぶ睡蓮の葉に覆われた水の底は、暗く深い色をしていました。ある暑い日の午後、旅の途中の若者が、一休みしようと睡蓮の池へやってきました。

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  7. 物語【静かな物語】最終話

    この森に春が来ました。居心地の良い土の中から旅立つ時がやってきたのです。土の外はどんな匂いがするのかしら?どんな風が吹いているのかしら?土の中から這い出た私は、生まれて初めて羽を広げ、まだ少し冷たい春の空気を吸い込みました。今、世界のすべてが、私に手を差し伸べています。

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  8. 物語【静かな物語】第3話

    ホウホウホウホウ…森の神様の語る声。ほらほら春はもうすぐですよ。森の生き物たち、もう少しの辛抱です。土の中で眠るものたち、目覚めの時が近づいていますよ。私には新しい季節の足音が聞こえています。そよそよそよそよ…風の声。さあさあ南の風がやってきましたよ。

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  9. 物語【静かな物語】第2話

    ざわざわざわざわ…木々の声。まだまだ風が冷たいね。今日は特に冷えること。森の中の生き物たちは寒くはないかしら。さあ、今日もこの森を守りましょう。ひそひそひそひそ…生き物たちの話し声。まだまだ春は遠くだね。

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  10. 物語【静かな物語】第1話

    誰も知らない森の中。外の世界から森を守るかのように高い木々が立ち並び、木漏れ日が当たる地面は草に覆われ、いつもしっとりと湿り気を帯びています。その地面の下の土の中は、柔らかくて暖かくて、居心地の良い暗闇。私はこの森の地面の中で、孵化する時を待っています。

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