1. 物語【祝福】最終話

    僕を懸命に育てながら、父さんの心はいつも母さんへの愛でいっぱいだったのだ。だけど、こんなにも母さんを恋しがり、さまざまな助けを求める手段に失敗し挫折しながらも、船でこの島を出るという選択はしなかった。僕の命をを守るために。

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  2. 物語【祝福】第4話

    送ることもできないのに書き続けた手紙の相手の名前は、ずいぶんと前に僕の母さんであると教えてもらった名前だ。父さんは母さんを恋しがっていた。会いたいと何度も書いていた。もしも自分だけなら船を造り、命の危険を冒してでも君のもとへ旅立っただろう。

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  3. 物語【stand alone】最終話

    ふと目が覚めて、私は気がつきました。きっともう、星は現れているのでしょう。足下の砂にばかり気を取られ、心の中で星を探し求め続けていたけれど、見上げれば空にはいつも満点の星空が輝いていたのです。この空に輝く星のすべてが、私の目指す星。

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  4. 物語【祝福】第3話

    父さんがいなくなってから長い時が流れ、僕は言葉と文字を忘れないようにする、と言う約束を守っていたけれど、言葉を知っていても文字を知っていても、誰にも何も伝えたいことがなかったし、そもそもずっと1人だったから伝える相手もいない。はて、ではなぜ人として生まれたのだろうか?と、時折思う。

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  5. 物語【stand alone】第1話

    私は旅をしていました。長い長い暗闇の中を一人歩く旅です。光り輝く星が見えるでしょうか。私にはまだ見えません。私はどこへ向かえばいいのでしょうか。西か東か、今はそれさえもわかりません。誰かが空を指し示し「ほら、あれがあなたの目指す星だよ」と、教えてくれたらいいのに。

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  6. 物語【祝福】第2話

    父さんは僕に手紙を残していた。その手紙には僕を勇気づける言葉と、僕に守って欲しいと言う約束が3つ書いてあった。1つ目は「言葉と文字を忘れないこと」2つ目は「助けを求める努力を続けること」3つ目は「父さんを捜さないこと」僕は1つだけ約束を守らなかった。

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  7. 物語【祝福】第1話

    この無人島で、僕は育った。僕の他に人間はいなかったので、もう何年も誰かと話した記憶もなかったけれど、それが普通だった。僕が子どもの頃は「父さん」と言う人がいて、僕の面倒を見てくれて、生きていくためのさまざまなことを教えてくれた。

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  8. 物語【citrus】最終話

    夕方、最後のフェリーが出る時間がやってきた。僕は思わず「この島に住んじゃおうかな」とつぶやいた。女の人は僕のほうを見ずに、ただ海だけを見ながら言った。「この島は死人が住むところじゃないわ。生きた人間が住むところよ。

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  9. 物語【citrus】第2話

    爽やかで甘酸っぱい香りにひかれた僕は、ジューススタンドで冷たいオレンジ色のジュースを買った。ジュースを一気に飲み干す僕の顔を見て、女の人が言った。「まるで死人のような顔をしているわ。船酔いしたの?」「大丈夫です。

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  10. 物語【citrus】第1話

    島まで約30分の船旅。甲板で風に吹かれながら、1年前のことを思い返していた。1年前の僕は、人生に疲れて、人生をあきらめていた。ある朝荷物をリュックに詰め込むと、誰にも何も言わずに、一人暮らしのアパートをあとにした。

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