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物語【夜間飛行】最終話
やがて、小さな自分のアパートへ舞い戻った青年に、翼をつけた女性が言いました。「あなたはどこへでも行くことができる。想像力という翼を広げて、どこへでも…」女性はにっこり微笑むと、パサリとわずかに羽の音をさせて、夜の空へと飛び立っていきました。
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物語【夜間飛行】第4話
翼のある女性とともに、青年は空の上から様々な世界を見てまわりました。暖かい南の海の、今まで見たことがない深く透明な青さ。寒い寒い北の国の、真っ白な雪の世界と暖かく揺れる家々の明かり。アラビアンナイトのような建物に、青年の心はワクワクと弾み、思わず感嘆の声を上げました。
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物語【夜間飛行】第3話
素晴らしい体験をすればきっと素晴らしい小説が書けるに違いない…。青年は、父親について世界旅行へ旅立つと言う友達をうらやましく思いました。そして、軽く頭を振ると、薄暗い部屋の中で1人自分を責めました。
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物語【夜間飛行】第2話
その友だちは小説家を目指す同志なのです。家がお金持ちの友達と貧しい青年、立場は違えど同じ夢を語り合う時間を何度も持った仲間です。友達の頰は紅潮し、希望で輝いていました。青年は軽くコーヒーカップを持ち上げて「おめでとう」とにっこりしました。
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物語【夜間飛行】第1話
ある街にとても貧しい青年がいました。青年は働きながら小説家を目指していました。生活費を稼ぐ仕事の合間にコツコツと小説を書いてはコンクールに挑戦していましたけれど、いつもあと一歩のところで夢はつかめません。ある晩のこと、青年は町のカフェでコーヒーを飲んでいました。
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物語【夜明け】最終話
しばらくすると、すっかり葉が落ちた木々の向こう、太陽の光がかすかに空を照らし、雪の上に透き通った影を作り始めました。新しい雪、新しい足跡、新しい太陽、新しい1日、新しい希望…すべてが新しい、夜明け。凍えた指先に、昇り始めた太陽のかすかな光さえも暖かく感じられます。
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物語【夜明け】第2話
あるとても寒い晩、もうすぐ夜が明ける頃、少女はそっと家の外に出ました。雪は宵のうちに止み、降り積もった雪が淡く光り輝いています。見上げると、空にはまだ冬の夜を彩る星たちが輝いていました。「お母さん、いってきます。私、神様のご褒美が何か知りたいの。
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物語【夜明け】第1話
山のふもとの村に住む少女は、冬のあいだ夜になるとお母さんの針仕事を手伝います。少女のお父さんは町へ仕事に出かけ、春になるまで帰ってきません。ある晩、お母さんが針仕事をしながらこんな話をしてくれました。「この村にはね、昔からの言い伝えがあるのよ。
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物語【夜の風に吹かれて】最終話
「あなたはたった1人でこの畑を?」「野菜を育てる暮らしが私の夢だったからね。景気が良い大きな町へ引っ越して行ったこの町の者たちは、私を偏屈な男だと笑ったよ。でも1人ではなかった。妻が一緒に残って私の夢につきあってくれたんだ」老人は嬉しそうにニッコリと笑った。
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物語【夜の風に吹かれて】第5話
この家の裏に畑があり、野菜を育て、ヤギを飼っている。時折隣の町まで出かけ、野菜を売ったり、他の食物と交換してもらう。「まれにあんたのような旅人を泊めてやると、金を置いて行ってくれることもある。どうやらあんたは文無しのようだが」老人はそういって笑った。
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