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物語【night game】
一人で過ごす夜、大きな窓から見下ろす都会、エラい社長さんが座るようなゴージャスな椅子に身を沈めて、ゆったり時を過ごしましょう。肘掛けに置いた手にはブランデーグラス。グラスの中の琥珀色の液体から立ちのぼる芳香な香り。気分をだしてグラスをまわしてみたりして。
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物語【night piece】最終話
「私の飼い主は一人で暮らしていた時だって、とても幸せそうだったよ。自分を愛して慈しんでいたからね」「その人は…1年前に亡くなったの?」「いや、元気だよ」猫がニヤリと笑いました。「1年前に王子様が現れて、一人暮らしではなくなったのさ。
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物語【night piece】第5話
「彼女にだって長い人生の中では色々なことがあっただろう。だけど、家を花で飾り、いつでもきちんとおしゃれして、お気に入りのカフェでお茶を飲み、1人で夕食を食べる時もきれいに盛りつけて、豪華じゃないけど自分のために美味しいディナーを用意して。
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物語【night piece】第4話
「君がなぜ寂しいのかわかるかい?君が寂しいと思っているからだよ」私をじっと見据える猫の目がきらりと光りました。「この家は私の飼い主の家さ。飼い主はとてもかわいい老婦人だよ。
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物語【night piece】第3話
角を曲がると街の印象が広々としたものに変わり、家々を照らす月さえも輝きが増したように感じました。大きな家、広い庭、門のところに必ずついているセキュリティマーク。ゆったりと立ち並ぶ家の外観はけして派手ではないけれど、センスの良さと高級感が溢れ出ています。
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物語【night piece】第2話
私は見知らぬ猫とともに、夜の散歩に繰り出しました。この街に住んで2年になるけれど、この街のことは良く知りません。「もう少し行くと高級住宅街だよ」私の斜め前を歩きながら猫が言いました。「それは知ってるわ。
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物語【night piece】第1話
眠れない夜、窓を開け小さなベランダから通りを見下ろしていました。誰もいない街。人の気配を感じない夜の街は、まるでゴーストタウンのようです。ぼんやり照らす街灯の灯りの中、一匹の猫の姿が見えました。「こんばんは」私の方を見上げた猫が挨拶をしてきました。
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物語【夏の終わり】最終話
もう夏が終わろうというある日、私が海の見える丘へ行くと、女の人はいませんでした。いつも2人で並んで海を見た木陰はただ風が吹き抜け、ざわざわと木の葉たちが揺れています。約束をしているわけでもないし、いつも会うわけではなかったけれど、妙な胸騒ぎを覚えて私は辺りを見回しました。
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物語【夏の終わり】第3話
約束をしていたわけではないけれど、私たちはたびたびの見える丘で会いました。女の人は、外国の映画の話、私にはまだ難しい小説の話、ファッションやおしゃれの話、いろいろな話を聞かせてくれました。時には何も話さずに海を眺めていることもありました。
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物語【夏の終わり】第2話
ある夏のこと、一日一度の船便に乗って一人の女の人が島へ降り立ち、暮らし始めました。ときおり物好きな旅人がやってくるけれど、この島へ外からの人が住み着くことは滅多にありません。島の人たちは戸惑い、女の人とは距離を置くように過ごしていました。
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