【幸せを紡ぐ物語】
12.52022
物語【夜明け】第1話
山のふもとの村に住む少女は、冬のあいだ夜になるとお母さんの針仕事を手伝います。
少女のお父さんは町へ仕事に出かけ、春になるまで帰ってきません。
ある晩、お母さんが針仕事をしながらこんな話をしてくれました。
「この村にはね、昔からの言い伝えがあるのよ。
その冬一番寒い夜、お日様が昇るのと一緒に山の頂上へ行ったものには、神様のご褒美が待っているのだそうよ。」
「まあ、神様からのご褒美?」
「そうよ。でも、一番寒い夜に山の頂上だなんて、そんな物好きなことする人はいないわね」
お母さんは、針仕事の手を止めずに笑いました。
神様のご褒美ってなにかしら?
その日から少女はお母さんの話が気になって仕方がありません。
…第2話へ続く
〈絵と文/松本圭〉
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