「睡蓮の花というのは、昼に咲きはじめ、日の入りには眠るように閉じてしまうそうですね」若者は池の睡蓮をじっと見つめました。「そうです。この池の花ももうしばらくすると閉じてしまいます。
1年前、夢破れて故郷を離れてから、誰かのために力を尽くすなどと言うことがあっただろうか…。思えば今日まで、ただひたすらに自分のためだけの道のりだったと、若者は歩きながら旅路に思いを巡らせていました。小さな睡蓮の池を出てから、ちょうど丸一日たった午後、歩き続けた若者は西の森へつきました。
「旅の方、あなたにお願いがあります。私はとても大切な約束で明日の夕方までに西の森へ行かなければなりません。ですが、痛んだ羽が治るまで3日はかかるでしょう。どうか私を西の森まで運んでいただけませんか?」若者は驚きながらも快く妖精の願いを引き受けました。
気のせいか…と思って、池へ目をやると、池に浮かぶ睡蓮の葉の上に、背中に羽をつけた小さな少女が座っている姿が目に入りました。少女の大きさは、若者の手のひらに乗るくらいでしょうか。旅の疲れが見せる幻か、と思い、若者は目をこすりもう一度池を見ましたが、やはり睡蓮の葉の上に少女がいます。
あるところに睡蓮の花が浮かぶ、小さな池がありました。その水は青く澄んでいましたが、重なりあうように浮かぶ睡蓮の葉に覆われた水の底は、暗く深い色をしていました。ある暑い日の午後、旅の途中の若者が、一休みしようと睡蓮の池へやってきました。
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