【幸せを紡ぐ物語】
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物語【girls garden】第1話
うっそうと木が立ち並んだ暗い森の奥深く、木々の作る暗闇から解放された明るい場所がありました。その場所は、暗い舞台の上でまるでそこだけスポットライトがあたっているかのように、1年中光に満たされていました。
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物語【夜の風に吹かれて】最終話
「あなたはたった1人でこの畑を?」「野菜を育てる暮らしが私の夢だったからね。景気が良い大きな町へ引っ越して行ったこの町の者たちは、私を偏屈な男だと笑ったよ。でも1人ではなかった。妻が一緒に残って私の夢につきあってくれたんだ」老人は嬉しそうにニッコリと笑った。
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物語【citrus】最終話
夕方、最後のフェリーが出る時間がやってきた。僕は思わず「この島に住んじゃおうかな」とつぶやいた。女の人は僕のほうを見ずに、ただ海だけを見ながら言った。「この島は死人が住むところじゃないわ。生きた人間が住むところよ。
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物語【春を待つ日】第4話
「故郷か…」故郷、と言った私の返事に何かを思い出したかのように若者はつぶやきました。「あなたはなぜ自分が生まれた国を出たの?」若者は私の質問には答えずに、アイスクリームのコーンの最後のひとかけらを口に放りこみました。
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物語【夜の風に吹かれて】第5話
この家の裏に畑があり、野菜を育て、ヤギを飼っている。時折隣の町まで出かけ、野菜を売ったり、他の食物と交換してもらう。「まれにあんたのような旅人を泊めてやると、金を置いて行ってくれることもある。どうやらあんたは文無しのようだが」老人はそういって笑った。
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物語【citrus】第2話
爽やかで甘酸っぱい香りにひかれた僕は、ジューススタンドで冷たいオレンジ色のジュースを買った。ジュースを一気に飲み干す僕の顔を見て、女の人が言った。「まるで死人のような顔をしているわ。船酔いしたの?」「大丈夫です。
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物語【春を待つ日】第3話
この国では短い春の間、あちこちでお祭りが催されます。仕事が休みの日、カフェで出会った青年を町のお祭りに案内することにしました。お祭りの会場は、町の人たちだけではなく、近隣の国から稼ぎにきた大道芸人たちや観光客で賑わっています。
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物語【夜の風に吹かれて】第4話
すすめられるままに食卓に着くと、思いのほか清潔なその家の台所から、老人が暖かいスープと香ばしい香りのパンを運んできてくれた。幾日ぶりのまともな食事だろうか、私はパンをほおばりながら思わず涙を流し、スープを一口ずつ大切に飲んだ。
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物語【citrus】第1話
島まで約30分の船旅。甲板で風に吹かれながら、1年前のことを思い返していた。1年前の僕は、人生に疲れて、人生をあきらめていた。ある朝荷物をリュックに詰め込むと、誰にも何も言わずに、一人暮らしのアパートをあとにした。
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物語【春を待つ日】第2話
そんなある日、見慣れない顔の青年がカフェにやってきました。青年の少し緑がかった瞳は、この国の生まれではないことを物語っていました。コーヒーを運んで行った私に青年が話しかけてきました。「この国はなんて素晴らしいんだろう。
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