【幸せを紡ぐ物語】

物語【夜の風に吹かれて】第4話

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すすめられるままに食卓に着くと、思いのほか清潔なその家の台所から、老人が暖かいスープと香ばしい香りのパンを運んできてくれた。
幾日ぶりのまともな食事だろうか、私はパンをほおばりながら思わず涙を流し、スープを一口ずつ大切に飲んだ。
老人は私の涙を見ないように、そっと横を向いてスープのお代わりをよそってくれた。

私は腹が満たされて初めて、老人がこのゴーストタウンに住んでいる理由を訪ねた。
「あなたはなぜこんなところに1人で住んでいるのです?この町はゴーストタウンではありませんか」
「昔は小さいけれどにぎやかな街だったがね」
「行くところがないのですか?」
私の不躾な質問に、老人は笑って答えた。
「私がこの場所を選んだのだよ」

…第5話へ続く
〈絵と文/松本圭〉

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