【幸せを紡ぐ物語】
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物語【シャボン玉】第1話
「いつもあなたを見ています。遠くの空から見ています。」今日もまたあの夢を見ました。1ヶ月に1度、必ず見る夢。どこか遠くの空から私に語りかける声がして、私は声の主を捜すのだけれど、あたりには誰も見当たりません。見上げる上空には青い空が広がり、たくさんのシャボン玉が舞っています。
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物語【羽ばたく】第4話
白い鳥は、天使のやり取りを静かに聞いていました。「白い鳥よ。鳥が飛ぶのは生きるためです。魚たちが泳ぐのも花たちが咲き乱れるのも、生きるためです。そして白い鳥よ、あなたは今生きています。ちゃんと自分の役目をまっとうしているではありませんか。
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物語【ハナキリン】最終話
次の朝、目覚めたお姫様がお城の窓から外を見ると、そこにはもう立ち並ぶハナキリンはありませんでした。いつも見慣れたハナキリンの変わりに、お城の門の前にはまっすぐな道が伸びているのが見えました。
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物語【ガーベラ】最終話
悲しい気持ちで下を向いていた私を、お花屋さんがバケツから救い上げ、手早く新聞に包みました。私はお花屋さんのお家に飾られました。少ししおれてきてしまった私だけど、お花屋さんは私を特別素敵な花瓶に生けてくれました。そして、食卓の真ん中の特等席に飾り、愛情のこもった目で私をながめました。
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物語【羽ばたく】第3話
天使は白い鳥を見つめ「耳を澄ませていなさい」というと、岸壁の上の空を飛ぶ鳥たちに話しかけました。「鳥たちよ、あなた方はなぜ空を飛んでいるのです?」「天使さま、それは生きるためですよ。生きるためにはエサを探さなくてはなりません」天使は次に、海を泳ぐ魚に話しかけました。
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物語【ハナキリン】第3話
王様の愛情がこもった手紙を、お姫様は涙を流しながら読みました。そして、お姫様は初めて知った自分の境遇と、この城を出て暮らすことへの不安で、胸が震えました。今までたった一人の召使いとしか、自分以外の人間に会ったこともないと言うのに、どうしてこの城を出られましょう。召使いが言いました。
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物語【ガーベラ】第4話
私は花です。ガーベラです。町の小さなお花屋さんに並んでいます。私は今日、どなたのお家に飾られるのかしら。そう思いながらお客様を待っていたけれど、誰も私を選ばないまま、私の花は色あせてきてしまいました。明日はこのお店の定休日です。
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物語【ハナキリン】第2話
どうして自分が一人でいるのか、お姫様は考えたことがありません。遠い遠い記憶で、優しい父と母がいたような気がするけれど、お姫様にとっては物心ついたときから、召使いが自分の唯一の家族でした。お姫様が18歳になったとき、召使いが一通の手紙を持ってきました。
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物語【ハナキリン】第1話
昔々あるところに、大きな森がありました。大きな森のその奥に、刺に覆われたハナキリンで守られた、小さなお城がありました。お城には一人のお姫様が、一人の年老いた召使いとともに暮らしていました。お姫様は朝目覚めると、お城の窓を開け外の空気を吸いました。
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