希望の歌
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物語【希望の歌】最終話
僕たちが命がけでとってきた希望の箱は空っぽだった。この箱を開ければ、太陽が輝き、空は澄み渡り、木々には緑が溢れ、みんなの顔が笑顔でいっぱいになると思ったのに…。「世界を変えられると思ったんだ。だけど…」がっくりと肩を落とす僕たちに一人の老人が言った。
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物語【希望の歌】第5話
僕たちはすべての大人たちに集まってもらった。「魔の谷へ降りたのかい?」「言いつけを守らなくてごめんなさい。でも、僕たちは希望の箱を見つけたんだ!ほら、この箱の蓋を開けると、素晴らしい世界にかわるんだよ!」あ、その箱は…大人たちの空気が一瞬和らいだ。
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物語【希望の歌】第4話
どれくらい進んだだろう?やがて僕たちは多分谷底の中心であろう、少し広い空間にたどり着いた。暗闇に慣れた目と、細々と燃え続けるたいまつの火を頼りにあたりを見回すと、ごろりと転がった大きな石の上に、小さな箱を見つけた。希望の箱。この箱を開くと悲しみに覆われた世界が変わる。
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物語【希望の歌】第3話
魔の谷には絶対に行ってはいけない。小さな頃から大人達から厳しく言われていたけれど、鞄に数日分の水とパンを詰め込むと、僕と仲間たちは魔の谷へ向かった。長く険しい道を、ゴロゴロと転がる石に足を取られながら歩き続けた。
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物語【希望の歌】第2話
僕は生まれた時からこの景色をみて育ったので、昔がどんなに素晴らしい世界だったのか知らない。だけど、誰もが笑顔を忘れたこの世界を、変えたいと思っていた。ある日、仲間の一人が言った。「夕べ大人たちが話しているのを聞いたんだけど、魔の谷には希望の箱っていうものがあるんだって。
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物語【希望の歌】第1話
この地は悲しみに覆われていた。空は黒ずみ、木々の葉は落ちたまま緑に茂ることもなく、草花は枯れ果て、人々は絶望とともに生きていた。昔は良かった…。幼い頃に見た景色はどこへ行ってしまったんだろう。この世界には希望がない。
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