【幸せを紡ぐ物語】

物語【風の匂い】第3話

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男の子は、今年の夏のお祭りのことを思い出しました。
いつもは大人が一緒じゃなきゃ行っちゃ行けないんだけど、今年は初めてケンタと「二人だけで行っていいよ」とお母さんが言ってくれたのです。

ケンタと二人、ドキドキしながら人ごみを歩きました。
スーパーボールすくいをしたり射的をしたりして、屋台で買ったお好み焼きを二人で食べたのでした。
ケンタと一緒だから怖くなかった、初めて子どもだけで行ったお祭り。

男の子の胸は、またキュンと痛みました。

女の子がもう一度ニコッと笑うと、今度は風に乗って鉄のような匂いがしました。
一昨年のこと、サッカーをしていたときに男の子とぶつかって転んで、ケンタの膝からたくさんの血が出た、あのときの匂いです。

…最終話へ続く
〈絵と文/松本圭〉

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