1. 物語【静かな物語】最終話

    この森に春が来ました。居心地の良い土の中から旅立つ時がやってきたのです。土の外はどんな匂いがするのかしら?どんな風が吹いているのかしら?土の中から這い出た私は、生まれて初めて羽を広げ、まだ少し冷たい春の空気を吸い込みました。今、世界のすべてが、私に手を差し伸べています。

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  2. 物語【静かな物語】第3話

    ホウホウホウホウ…森の神様の語る声。ほらほら春はもうすぐですよ。森の生き物たち、もう少しの辛抱です。土の中で眠るものたち、目覚めの時が近づいていますよ。私には新しい季節の足音が聞こえています。そよそよそよそよ…風の声。さあさあ南の風がやってきましたよ。

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  3. 物語【静かな物語】第2話

    ざわざわざわざわ…木々の声。まだまだ風が冷たいね。今日は特に冷えること。森の中の生き物たちは寒くはないかしら。さあ、今日もこの森を守りましょう。ひそひそひそひそ…生き物たちの話し声。まだまだ春は遠くだね。

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  4. 物語【静かな物語】第1話

    誰も知らない森の中。外の世界から森を守るかのように高い木々が立ち並び、木漏れ日が当たる地面は草に覆われ、いつもしっとりと湿り気を帯びています。その地面の下の土の中は、柔らかくて暖かくて、居心地の良い暗闇。私はこの森の地面の中で、孵化する時を待っています。

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  5. 物語【祝福】最終話

    僕を懸命に育てながら、父さんの心はいつも母さんへの愛でいっぱいだったのだ。だけど、こんなにも母さんを恋しがり、さまざまな助けを求める手段に失敗し挫折しながらも、船でこの島を出るという選択はしなかった。僕の命をを守るために。

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  6. 物語【祝福】第4話

    送ることもできないのに書き続けた手紙の相手の名前は、ずいぶんと前に僕の母さんであると教えてもらった名前だ。父さんは母さんを恋しがっていた。会いたいと何度も書いていた。もしも自分だけなら船を造り、命の危険を冒してでも君のもとへ旅立っただろう。

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  7. 物語【祝福】第3話

    父さんがいなくなってから長い時が流れ、僕は言葉と文字を忘れないようにする、と言う約束を守っていたけれど、言葉を知っていても文字を知っていても、誰にも何も伝えたいことがなかったし、そもそもずっと1人だったから伝える相手もいない。はて、ではなぜ人として生まれたのだろうか?と、時折思う。

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  8. 物語【祝福】第2話

    父さんは僕に手紙を残していた。その手紙には僕を勇気づける言葉と、僕に守って欲しいと言う約束が3つ書いてあった。1つ目は「言葉と文字を忘れないこと」2つ目は「助けを求める努力を続けること」3つ目は「父さんを捜さないこと」僕は1つだけ約束を守らなかった。

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  9. 物語【祝福】第1話

    この無人島で、僕は育った。僕の他に人間はいなかったので、もう何年も誰かと話した記憶もなかったけれど、それが普通だった。僕が子どもの頃は「父さん」と言う人がいて、僕の面倒を見てくれて、生きていくためのさまざまなことを教えてくれた。

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  10. 物語【citrus】最終話

    夕方、最後のフェリーが出る時間がやってきた。僕は思わず「この島に住んじゃおうかな」とつぶやいた。女の人は僕のほうを見ずに、ただ海だけを見ながら言った。「この島は死人が住むところじゃないわ。生きた人間が住むところよ。

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