【幸せを紡ぐ物語】
12.222024
物語【すずらん】
あたしはすずらんの妖精、5月生まれよ。
すずらんって白くてぷっくりと垂れ下がって並んだ、小さなお花がキュート。
誰だってすずらんを見たらウットリしちゃうでしょ?
だからほら、自分で言うのもなんだけど、すずらんの妖精のあたしもとってもキュート。
自慢じゃないけどモテモテなの。
すずらんの花言葉は「幸福が帰る、幸福の再来、意識しない美しさ、純粋」ですって。
あたしにぴったりだわ。
フランスでは5月1日が「スズランの日」ってことになっていて、友達とか家族とか、親しい人にスズランを贈る習慣があるのだそうよ。
贈られた人には幸福が訪れるって言われているわ。
なんて素敵!
まあ、私は日本生まれだから関係ないけど。
・
そうそう、とっても可愛くて可憐で幸せ感たっぷりのスズランだけど、スイートな印象とは裏腹に有毒物質をもっているの。
有毒物質は特にお花や根っこの部分に多くて、もしもうっかり食べちゃったら重症の時は死んじゃうらしいわ。
ほら、きれいな花には毒がある、っていうでしょ?
あれ?きれいな花には刺がある、だっけ?
まあ、どっちでもいいわよね。
とにかくそんなわけだから、あたしも時々有毒物質並みに毒発言をしちゃうのよ。
この間もおしゃれなカフェで友達とお茶していたら、男の子が声をかけてきたの。
その男の子ったら「となり座っていい?」なんて爽やかな笑顔で言っちゃって。
友だちはウットリした顔しちゃってさ。
まあ、ちょっと可愛い顔した男の子だったわね。
でもあたし、毒発言で撃退しちゃったの。
男の子はちょっと悲しい顔をしてすごすご行ってしまったわ。
その男の子、悪い人には見えなかったし、実を言っちゃうとちょっと好みだったんだけどね…。
少しくらい一緒にお茶してもよかったかしら?
なんでいつも毒発言しちゃうのかしら?
・
あたしって気が強い割に、時々自分の毒で傷ついちゃうの。
早くあたしの毒なんて全然気にしない、強くて優しいボーイフレンドが現れないかな。
そりゃ確かにあたしはモテモテなんだけど、そんなことより一人の人に愛されたいわ。
そんなこんなでちょっぴり切なく感じるこの頃。
ある日、1人静かに物思いに耽りながらカフェでお茶をしていたの。
ふと人の視線を感じて振り返ると…
なんと!この間の男の子が立ってるじゃない。
私と目が合うとにっこり爽やかな笑顔で
「となり座っていい?」
だって!
今日は毒発言封印よ!
終わり〈絵と文/松本圭〉
☆お読みいただきありがとうございました☆
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