【幸せを紡ぐ物語】

物語【祝福】第1話

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この無人島で、僕は育った。
僕の他に人間はいなかったので、もう何年も誰かと話した記憶もなかったけれど、それが普通だった。

僕が子どもの頃は「父さん」と言う人がいて、僕の面倒を見てくれて、生きていくためのさまざまなことを教えてくれた。
この島は天候が安定していて、森で木の実を取ったり海で魚を釣ったりして、食べ物に困ることはめったになかった。
父さんは、僕に文字の読み書きも教えてくれた。

父さんは島の外へ向けて助けを求める手段を探し続け、挑戦し続けた。
だけれど、それはいつも挫折に終わった。
父さんは時折、たき火の灯りに照らされながら泣いていた。
僕がすっかり寝込んだと思っていたのだろうけれど、僕は父さんの肩が震えるのを寝床から見ていた。

僕の体はぐんぐん育っていったけれど、父さんは少しずつ弱っていった。
僕に「お前にはすまないことをした。父さんの船が…」と何度も頭を下げるようになった。
そして、ある朝目が覚めると父さんはいなくなっていて、2度と戻らなかった。

…第2話へ続く
〈絵と文/松本圭〉

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