【幸せを紡ぐ物語】
10.202024
物語【桜の季節】
ある春の日、その年一番桜が美しかった日。
満開の桜の花を眺めながら、あなたがつぶやきました。
「優しさとは…」
「優しさとは?」
私はあなたに問い返しました。
あなたは私を見つめ、黙ったまま微笑みました。
それがあなたの優しさ。
あなたと私はベンチに座り、しばらくの時間降りしきる桜吹雪を見ていました。
桜吹雪を見つめながら私がつぶやきました。
「勇気とは…」
「勇気とは?」
あなたが私に問い返しました。
私はあなたを見つめ、黙ったまま微笑みました。
それが私の勇気。
あなたと私は散った桜の花びらを踏みながら、坂道を上りました。
坂のてっぺんまで来ると、坂の上からところどころピンク色に染まった街が見えました。
街を見下ろしながら、あなたがつぶやきました。
「希望とは…」
「希望とは?」
私はあなたに問い返しました。
あなたは遠くの空を見つめ、何も答えませんでした。
それがあなたの答え。
坂道を降り、満開の桜に別れを告げました。
名残惜しげにまとわりつく、桜の花びらを手のひらに乗せ、私がつぶやきました。
「未来とは…」
「未来とは?」
あなたは誰にともなく問い返しました。
あなたと私はお互いの目を見つめ、にっこりと微笑みました。
それが二人の未来への答え。
来年もまた、桜の季節がやってきます。
同じように季節は巡ってくるけれど、今年とは違った風が吹き、今年とは違った日差しの下で、今年とは違う花が咲くのでしょう。
あなたはあなたの場所で、私は私の場所で、新しい気持ちで桜の花を眺める春。
私は優しい思い出と精一杯の勇気を持って、新しい希望とともに、未来を歩いていることでしょう。
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終わり〈絵と文/松本圭〉
☆お読みいただきありがとうございました☆
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