【幸せを紡ぐ物語】
9.92022
物語【黄色いバラ】第4話
独り言のようにつぶやいた女性に店主が言いました。
「バラの季節以外にも店はやっていますよ。いつでもあなたをお待ちしています」
「ありがとうございます。でも私、この土地を離れることにしたんです」
「おや、それは寂しいですね」
「去年のあのとき、悲しみに暮れる私にあなたが言ってくださいました。花には季節があると。
あなたはあなたの季節にちゃん咲きますよ、って」
「そうでした。ずいぶん生意気なことをいいました」
照れる店主に女性が言いました。
「私の旅立ちの季節が来たんです。自分の花を咲かせようと思います」
女性は店主の目をまっすぐに見つめました。そして、
「私の恋の花はまだ蕾だけれど…」
と付け足してクスリと笑いました。
…最終話へ続く
〈絵と文/松本圭〉
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