【幸せを紡ぐ物語】

物語【ガーベラ】第1話

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私は花です。ガーベラです。
町の小さなお花屋さんに並んでいます。
私は今日、どなたのお家に飾られるのかしら。

夕方、白髪まじりの紳士がお店の前で足を止め、私を選んでくれました。
私を抱える紳士のグレーのスーツからは、一日中働いた人の匂いがしました。
今日は奥様との記念日かしら?

家に戻った紳士は、真っ先に私を飾り気のない花瓶に生けてくれました。
そして、笑顔の女性が写った白黒写真の横に、そっと飾りました。
部屋着に着替えた紳士は、出来合いのお惣菜を盛ったお皿をテーブルに並べると、グラスにビールを注ぎ、写真に向かって軽く持ち上げました。

今日も一日お疲れ様でした。
私はあなたのために、明日の朝も可憐に咲きましょう。

…第2話へ続く
〈絵と文/松本圭〉

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