【幸せを紡ぐ物語】

物語【ある光】第6話

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「いないんですか?入るよ」
といって、部屋に入ると、ベットの上にぼんやりと座り込んだ彼女がいた。
「あ、ごめん。チャイムの音、気がつかなかった」
そういって僕を見上げた彼女の左の頬は腫れて、赤くなっていた。
「どうしたの?誰に殴られたの?」
「うん。昨日のお客さん。でも、理由を知ったらあなたも私を殴りたくなるかも」
そういって笑おうとしたけど、頬が痛いのか顔をしかめた。

「光がでなくなったの。もう、あなたの心を癒すための光はでないの」
「それが理由で殴られたの?」
「うん、だって、ここに来る客は私の光がなければ生きていけない人ばかりだもの。そのお客さん、すごく動揺して私を殴って出て行ったわ」
「君を殴っていい理由にはならないよ」
「そうね。でも、私も悪いんだよ。たぶん」
「なんでだよ。光が出ないのに金をもらったわけじゃないだろ?」
「うん。でもね、ここに来てくれる人たちを私の光がないと生きていけないようにしてしまったのは私かもしれないでしょ。
最初は私の光で心を癒してあげられるなら…なんて思って始めたはずだったけど、結局は光がなくては生きられない中毒者を作っただけ。
今になって思うと、誰かを癒してあげたいだなんて…その考えだって傲慢だわ」

僕が黙って聞いていると、彼女は横を向いたまま言った。
「あなたにももう光を紡いであげられないの。ごめんね」
「謝らなくていいよ。僕はもう君の光は必要ない」

…最終話へ続く
〈絵と文/松本圭〉

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