【幸せを紡ぐ物語】

物語【ある光】第2話

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僕は彼女に金を渡すと部屋の隅に膝を抱えて座った。
この部屋のどこでどんな格好をしてもいいのだけれど、隅っこで膝を抱えると落ち着いた。
灯りを消した部屋の中で、ベットに横たわった彼女のまわりだけがぼんやりと明るくなり始めた。
だんだんと強くなるその光を見ていると、僕の心は懐かしいふるさとへ帰っていった。

子どもの頃に遊んだ青い海の色。
頬を射す太陽の強い光の眩しさ。
屈託なくはしゃぐ幼い自分の姿。
僕の隣では、まだ元気だった祖父が釣り竿を片手に笑っている。

光の幻想の中でまどろみ続けながら、僕はいつも泣いていた。

時間の感覚がないまま、やがて光は終焉を迎える。
僕の心は、イヤなことも汚れも怒りも悲しみも、すべてが洗い流され、穏やかな光に満たされていた。
意識がハッキリと戻ってふと、ベットに横たわる彼女を見ると、目から血が混ざったようなピンク色の涙を流しながら震えていた。

…第3話へ続く
〈絵と文/松本圭〉

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