【幸せを紡ぐ物語】

物語【赤い花】

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あるところに、気だてが優しくて働き者の娘がいました。
娘の家はとても貧しかったので、村の学校へも行かず、小さな妹や弟の面倒を見ながら毎日家の手伝いをして暮らしていました。

娘は今日も父さんに言いつかって、一人で山へ薪を拾いに行きました。
山道をだいぶ歩き、喉を潤そうと思った娘が小さな滝へ向かって歩いて行くと、古い木の陰に背の高い若者が倒れていました。

若者はずいぶんと弱っていましたが、気は確かなようです。
娘が恐る恐る近づくと、目を開き「娘さん、すまないが水を飲ませてもらえませんか」と小さな声でいいました。
娘は黙ってうなづくと、急いで滝まで水を汲みに行きました。

娘は自分の竹筒に冷たい滝の水をたっぷり汲むと、若者のもとへ急いで戻りました。
そっと助け起こし水を飲ませてやると、若者は美味しそうに水を飲みました。

次の日、同じ場所に行くと若者は木に寄りかかって座っていました。
昨日よりも具合が良さそうでしたが、まだ生気のない顔をしています。
娘は家から持ってきた握り飯を若者に差し出し、滝へ水を汲みに行きました。

次の日も、また次の日も、娘は薪を拾いに山へ入っては若者の世話をしました。

いつも一人で山に入っていた娘は、若者に会うことが待ち遠しくなりました。
何を話すわけでもないけれど、若者のとなりに座って、若者が握り飯を食べ水を飲むのを見届けると、薪拾いの続きをしに行くのでした。
若者は、娘の介抱の甲斐あって日に日に元気になっていきました。

しばらくしたある日、娘が若者のいる場所に行くと、若者は木に寄りかかって娘を待っていました。
「ああ、今日がお別れの日なのだ」と娘にはわかりました。

背の高い若者は、そっと腰を屈めて娘の前に赤い花を差し出しました。
「あなたが悲しみの中にいるとき、必ず助けにきます。もしも空から赤い花びらが舞ったら、私があなたを見守っているときです」
若者は娘に赤い花を手渡すと、その花びらを一枚ぷつりと抜いて口にくわえました。
すると、若者は青く輝く美しい鱗を持った龍になり、風の音とともに空へ昇って行きました。

空へ昇った龍の姿は、日の光に鱗をきらきらと輝かせながら小さくなり、やがて見えなくなりました。
娘は赤い花を大切そうに懐へしまうと、薪を拾いに山道を歩きはじめました。

終わり〈絵と文/松本圭・制作2015年頃〉

☆お読みいただきありがとうございました☆

絵画作品「赤い花」作品詳細はこちらからどうぞ!

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