幸せを紡ぐ物語

  1. 物語【夜の風に吹かれて】第4話

    すすめられるままに食卓に着くと、思いのほか清潔なその家の台所から、老人が暖かいスープと香ばしい香りのパンを運んできてくれた。幾日ぶりのまともな食事だろうか、私はパンをほおばりながら思わず涙を流し、スープを一口ずつ大切に飲んだ。

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  2. 物語【citrus】第1話

    島まで約30分の船旅。甲板で風に吹かれながら、1年前のことを思い返していた。1年前の僕は、人生に疲れて、人生をあきらめていた。ある朝荷物をリュックに詰め込むと、誰にも何も言わずに、一人暮らしのアパートをあとにした。

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  3. 物語【春を待つ日】第2話

    そんなある日、見慣れない顔の青年がカフェにやってきました。青年の少し緑がかった瞳は、この国の生まれではないことを物語っていました。コーヒーを運んで行った私に青年が話しかけてきました。「この国はなんて素晴らしいんだろう。

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  4. 物語【夜の風に吹かれて】第3話

    私は明かりが灯った小さな家の窓から、こっそりと中を覗いた。もしかしたら、この町の人たちを追い出したならず者たちの隠れ家かもしれない。窓の隙間からは何やら良い匂いが漂っていた。スープの匂いだろうか…と、思わず味を想像しようとしたところで、ギィっと錆びた金具の音を立ててドアが開いた。

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  5. 物語【見知らぬ雨】最終話

    森の中の雪道のところどころ、茶色い地面が顔を出し、女の子の足跡は雪解けの土に包み込まれて消えていました。春がやってきたのです。背の高い木の上から、とけだした雪がバサリと音を立てて落ちました。木々の間から木漏れ日が差し込み、ここが約束の場所であることを告げています。

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  6. 物語【春を待つ日】第1話

    この国は春と冬、二つの季節しかありません。9ヶ月に及ぶ長い長い凍える季節が終わると、いっせいに草花が咲き、虫たちがもぞもぞと土からはい出し、短く美しい春の訪れを告げます。この国の人たちは、短い春の季節を待ち望んで寒い冬の季節を静かに過ごすのです。

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  7. 物語【夜の風に吹かれて】第2話

    星明かりを頼りに、かつては店だったと思わしき建物を見つけて、暗がりの中あれこれ物色したが、あめ玉一個も見当たらない。あてどない私の旅路も、このゴーストタウンで終わりを迎えるのだろうか?飢えて最後を迎えるなどとはなんと空しいことか。

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  8. 物語【見知らぬ雨】第3話

    春。女の子は咲き誇る花とともに歩きました。夏。太陽の力強い日差しを浴びると、歩き続ける勇気がみなぎりました。秋。色づいた木の葉たちは、季節が巡ることを告げてくれました。そして冬。女の子は降りしきる雪の中、静かに歩き続けました。

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  9. 物語【night piece】最終話

    「私の飼い主は一人で暮らしていた時だって、とても幸せそうだったよ。自分を愛して慈しんでいたからね」「その人は…1年前に亡くなったの?」「いや、元気だよ」猫がニヤリと笑いました。「1年前に王子様が現れて、一人暮らしではなくなったのさ。

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  10. 物語【夜の風に吹かれて】第1話

    星が輝く夜空の下、ピューピューと風が吹いていた。この町は人っ子一人見当たらず、どうやらゴーストタウンのようだ。立ち並ぶ家や店に明かりはなく、澄んだ空の星明かりだけがあたりを照らしていた。半分壊れかけた建物の間を、ゴミや枯れた草が風に吹かれて、生き物のように飛んで行った。

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