幸せを紡ぐ物語

物語【喝采】第2話

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女が歌手を夢見てこの街へやってきたのは5年前。
けれど、一人田舎からでてきて誰も知るものもいない女が歌手として成功するなど、一筋縄でいくわけがない。
女は昼間は街のレストランでウィトレスとして働きながら、夜になるとチャンスをつかもうといろいろな店を回った。
一曲でいいから自分の歌を聴いて欲しい…、女は歌う場がありそうな店をみつけては頼み込んだが、門前払いがいいところ、彼女を歌手として雇ってくれるところなどなかった。

夢のきっかけさえもつかめないまま日々が過ぎたが、女は歌手への夢を捨てることはできなかった。

心が折れそうになるといつも、街はずれの誰もいない墓地に面した空き地で歌を歌った。
歌手になった自分がきらびやかな舞台のスポットライトの中で、喝采を浴びる場面を心に描きながら…。

田舎にいたころは、青空の下で思う存分歌ったものだ。
でも今、見知らぬ街の小さなアパートで暮らす女が歌える場所は、この空き地だけだった。

…第3話へ続く
〈絵と文/松本圭〉

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