【幸せを紡ぐ物語】

物語【春を待つ日】第4話

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「故郷か…」
故郷、と言った私の返事に何かを思い出したかのように若者はつぶやきました。
「あなたはなぜ自分が生まれた国を出たの?」
若者は私の質問には答えずに、アイスクリームのコーンの最後のひとかけらを口に放りこみました。

それからしばらくの間、私たちは私の仕事が休みのたびにあちこちでかけ、春を満喫しました。
そして、もうすぐ短い春が終わりを告げようと言うある日、青年は旅支度をして待ち合わせの場所に現れました。

「この国を出るの?」
「うん」
「春の季節だけ楽しんで、寒い冬から逃げ出すと言うわけ?」
思わず嫌みを言ってから、私は後悔して頬を赤らめました。

「ううん、当然だわ。これから9ヶ月間も寒い冬が続くんだもの。
あなたにとってこの国は故郷でも何でもないし、出て行くのも自由だわ」
青年は優しいまなざしを私に向けると言いました。

…最終話へ続く
〈絵と文/松本圭〉

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