幸せを紡ぐ物語

物語【citrus】第2話

citrus

爽やかで甘酸っぱい香りにひかれた僕は、ジューススタンドで冷たいオレンジ色のジュースを買った。
ジュースを一気に飲み干す僕の顔を見て、女の人が言った。
「まるで死人のような顔をしているわ。船酔いしたの?」
「大丈夫です。もともとこんな顔なんです」
「どこから来たの?」
「墓場からです」
「なるほど、だから死人みたいな顔なのね」
女の人は感心したように頷いた。
「ねえ、ちょっと待ってて。もうすぐ品切れだから、店じまいよ。島を案内するわ」
女の人は残り少なくなっていたジュースを、水筒に入れ変えるとバックに押し込んだ。

それからしばらくの間、女の人に案内されるままに、狭い島をあちこち回った。
時々コミュニティバスのような物に乗りながら、さんざん歩き回った。
たいした名物があるわけではないけれど、島を囲む青い海と空に、心が癒された。

女の人と僕は、まるで昔からの友人のように、会話のテンポがあっていて、笑いのツボも一緒だった。
歩き疲れると、女の人がバックに詰めてきたオレンジ色の甘酸っぱいジュースを2人で飲んだ。
たった半日あまりだったけれど、島を巡る時間は、僕の死にかけた心を生き返らせてくれるようだった。

…最終話へ続く
〈絵と文/松本圭〉

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